「イノセント・ゲリラの祝祭」 海堂尊 宝島社文庫2010/03/14 23:44

東城大学医学部付属病院のリスクマネジメント委員長を務める通称「昼行燈」の神経内科講師田口に厚労省から召喚状が届く。送り主は厚労省官僚にしてトラブルメーカーの白鳥。いよいよ国家の中枢、霞が関の会議室で事件は起こる。

例のシリーズです。今回は喰えない官僚たちの生態を描いた作品になっています。作中のかなりのシーンが会議です。それ以外は根回しのシーンだったりします。それをこれだけ面白く書ける作家はこの人しかいないかもしれません。

物語のかなりの部分で官僚の理不尽な考え方を面白おかしく書きつつフラストレーションを蓄積して、後半、ドラマチックな展開でカタストロフィックに解消していくといういつもの構成です。これも考えてみればホームズ以来のミステリやサスペンスの常とう手段ではあるのですが、いかにも退屈そうな役所の会議でこれをする、というのが斬新ですね。つまんねー会議でうっぷんをためているサラリーマンにはたまんないものがあります。

でも、後半はちょっとやりすぎ感があるかなぁという気もします。あと解決されない伏線を張りすぎですね。この作品で完結するならいいんですが、ほったらかしの伏線が多すぎて、それもやりすぎな気がします。他の作品も読め、ということなのかもしれませんが行き過ぎると購入意欲が減退します。

ともあれ、一連の作品のテーマと思われる作者の死因究明に対する強い気持ちは感じます。そこが話を面白くしていますが、フィクションで世論や政治を動かしてしまっているような気配を感じるのが少し気になります。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://fey134.asablo.jp/blog/2010/03/14/4948803/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。