「海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年 4~6」 塩野七生 新潮文庫2010/02/06 19:34

ヴェネツィアを中心とした中世の地中海世界の歴史を描いたシリーズの後半です。トルコとの闘争、大航海時代を経てナポレオンに征服されるまでが描かれる合間に聖地巡礼と爛熟した文明の話題が織り込まれています。

やはり「聖地巡礼パック旅行」と題した章が非常に面白いですね。宗教がらみではありますが、観光のサービス事業化という点でものすごく先進的な考え方を持っていたんだなぁと思います。顧客満足度を上げながらカネを落としていく仕組みをきちんと作るということがこんな昔からできていたというのは驚きでした。また、サント・ブラスカの旅行記も、xxを食べた、xxを見たといった具合に当時の風俗がうかがえるのも楽しいです。

トルコとの闘争や大航海時代を経てだんだんと交易から工業、本土での農業といった具合に産業構造が変化し、同時にフランス革命の勃発など外的環境も変化していきます。やがてナポレオンに征服されることで共和国としてのヴェネツィアは死を迎えます。作者は平家物語を引用して盛者必衰を語りますが、リーマンショック以後の世界の形を見ているとこれまでの盛者がどうなっていくのか少し気になりました。

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