「グラーグ57」 トム・ロブ・スミス 田口俊樹訳 新潮文庫2010/06/26 23:08

レオが3年前に孤児院から引き取ったゾーヤは未だ国家保安省の捜査官であったレオに強い憎しみを抱いていた。そんな折、フルシチョフの秘密演説の原稿が発表され、かつての国家保安省の関係者が次々と殺される事件が発生した。やがて犯人の手はライーサやゾーヤに向かい、家族を救うためレオは酷寒の強制収容所「グラーグ57」を目指す。

前作「チャイルド44」の続編です。原題はどうも「THE SECRET SPEECH」、秘密演説、秘密報告を指すようです。スターリン亡きあとの旧ソ連の指導者フルシチョフが行った反スターリン主義的報告のことを指していると思いますが、かなり大胆に邦題をつけたような気がします。もう一作続編があるようですが、そっちもこんなタイトルにするんでしょうね。

テーマは人は人を憎しみ続けることはできるのか、といったところでしょうか。捜査官時代のレオの所業に憎しみを持つゾーヤとフラエラがこの物語の軸になります。そんな憎しみに対してレオは愚直に解決に臨みます。そんなレオを見て、妻のライーサすら「レオというのはなんとナイーヴな人なのだろう。」と言わしめるほどの愚直さですが、自らの唯一の寄る辺である家族を守るという強い意志を感じます。

この作品は東は日本海、西はハンガリーとかなりスケールの大きい話になっています。ちょっと風呂敷を広げすぎの感はありますが、押しつぶされそうな旧ソ連の全体主義社会をベースに、中央の方針が徹底しない辺境の強制収容所と動乱を起こした同盟国の緊迫した雰囲気のおかげでページを繰る手をなかなか止めてくれません。

前作に引き続き、この作品もかなり楽しめました。さらに続編が出るようならたぶん買っちゃうだろうなぁ。

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