「償いの椅子」 沢木冬吾 角川文庫2007/04/21 22:43

リーダー秋葉の死と同時に失踪した能見は、5年ぶりに街へ姿を現した。以前と同じように迎える加治、疑心暗鬼にとらわれる東野、待ち望んでいた梢と充。そして、知らず知らず待ち焦がれていた南城。仲間、家族、敵の思惑をよそに能見は隠微に活動を始める。能見の目的は何か、仲間、家族との絆は取り戻せるのか?

また、ハードボイルド物を手に取ってしまいました。私は平積みの本のカバー買い(装丁+裏のアオリ文)が多いのですが、いわゆる純粋な推理小説を避けがちなので、この手の本に行き着くことが多いのかもしれません。反省。

バイオレンスな描写、派手なドンパチが好きな方は、序盤を我慢すると後半では結構なカタストロフィーが楽しめると思います。台詞回しも、ハードボイルド物としてはまずまずかな、と思います。これでスカした感じだと思うとすればハードボイルドアレルギーでしょう。私も軽症なので時々鼻につきましたが。

比較的登場人物が多いですが、それほど混乱することもないですし、構成はしっかりしていると思いました。ボリュームを感じさせないで、終盤まで持っていく点についてはすばらしいと思います。

引っかかった点は2点。1つは最後の派手なドンパチ。単に好みでない、という点もありますが、日本の話でここまでするか、という印象を持ちました。

もう1つは、半身不随の能見は基本的に車で移動します。南城一派は車で尾行するのですがしょっちゅう撒かれます。ほとんど都内の移動である上、公安の部員という設定なのだから当然Nシステムに言及すべきだと思うのですが、全然出てきません。毎度毎度ナンバー偽装をしていたのかもしれませんが、その点がちょっと気になりました。

好みの作品ではないですが、作者の筆力は感じました。また、何かの弾みで別の作品を手にとってしまうかもしれません。

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