「葉桜の季節に君を想うということ」 歌野晶午 文春文庫 ― 2007/07/27 00:13
自称何でもやってやろう屋の成瀬は、同じフィットネスクラブに通う後輩キヨシが思いをよせる女性、久高愛子の家人の死の真相を探る依頼を受ける。悪徳商法の影が背後にちらつくその死を探るうち、成瀬は自殺志願の女、麻宮さくらの命を救い、強く魅かれはじめる。
この作者、どっかで読んだな、と思ったら、「ブードゥー・チャイルド」の人でした。アレもそうでしたが、この作品も下手なことが書けないですね。「ブードゥー…」の方は大体先が読めましたが、こっちはやられました。久々のやられた感です。かなり慎重に読んだのになぁ。
多くの部分が成瀬の一人称で書かれますが、文体が軽く、ガマンできるギリギリのラインでした。ちょっとつらいかなー、と思いつつ読み進むとだんだんストーリーに引き込まれる、という感じでした。会話文が多く、全然好みの文体ではないですが、面白かったです。悔しいですが。
ストーリーで好ましいのは、話を構築するに当たって偶然に頼るところが最低限だったことでしょうか。多分、一箇所だけ。完全に納得できる蓋然性の範囲です。ブラボ。
そして、物語の最終盤で、読者は無理やりパラダイムをひっくり返されます。私は少しくらっと来ました。さて、問題は次です。読者はもう一度この作品を読まなければなりません。私は2回目は違った楽しみがありました。ですが、2回目の読後の感想に対して、作者はある種の踏み絵を仕掛けているのかもしれないと感じました。私には今、森高のあの曲が聞こえます。
最近のコメント