「笑う警官」 佐々木譲 ハルキ文庫 ― 2007/07/08 16:28
札幌市内のアパートで殺人事件発生。殺された婦人警官と交際していた生活安全部の警官津久井が犯人と特定され、即射殺命令が出た。かつて、津久井と組んだ経験があり、またあまりに性急な展開に疑いを抱いた盗犯係の佐伯は信頼できる警官を集めて独自に捜査を始める。
ちょっと前にあった北海道警の裏金問題がベースになっている感じですね。 割合ベタな陰謀ものですが、タイムリミットが明らかなこと、裏の捜査本部に裏切り者がいることが早い段階でわかることから、なかなか手に汗握る展開になっていて楽しめました。
一方、スリリングな展開という点では良かったんですが、一部の表現がちょっとスカした感じなのが少し興をそがれる感じでした。「伝説のおとり捜査」とか「壮絶な話」とかの周辺の表現を見ると、ちょっと浮いてるなぁと思ってしまって、その都度物語の展開から少し気持ちがそれてしまいました。
「うたう警官」から「笑う警官」へ改題、ということなんですが、作者自身が元のタイトルは意味がわかりにくいと指摘を受けたことから改題した、ということのようです。しかしながら、新しいタイトルの理由が話の中身とはあまり関係なくて、内々の事情に裏づけられてるっぽいってのが今ひとつ納得いかない感じです。いや、どんなタイトルつけようと改題しようと作者の勝手ですが、そんな程度の理由ならわざわざ説明してもらわなくってもよいです、って思いました。
「葉桜の季節に君を想うということ」 歌野晶午 文春文庫 ― 2007/07/27 00:13
自称何でもやってやろう屋の成瀬は、同じフィットネスクラブに通う後輩キヨシが思いをよせる女性、久高愛子の家人の死の真相を探る依頼を受ける。悪徳商法の影が背後にちらつくその死を探るうち、成瀬は自殺志願の女、麻宮さくらの命を救い、強く魅かれはじめる。
この作者、どっかで読んだな、と思ったら、「ブードゥー・チャイルド」の人でした。アレもそうでしたが、この作品も下手なことが書けないですね。「ブードゥー…」の方は大体先が読めましたが、こっちはやられました。久々のやられた感です。かなり慎重に読んだのになぁ。
多くの部分が成瀬の一人称で書かれますが、文体が軽く、ガマンできるギリギリのラインでした。ちょっとつらいかなー、と思いつつ読み進むとだんだんストーリーに引き込まれる、という感じでした。会話文が多く、全然好みの文体ではないですが、面白かったです。悔しいですが。
ストーリーで好ましいのは、話を構築するに当たって偶然に頼るところが最低限だったことでしょうか。多分、一箇所だけ。完全に納得できる蓋然性の範囲です。ブラボ。
そして、物語の最終盤で、読者は無理やりパラダイムをひっくり返されます。私は少しくらっと来ました。さて、問題は次です。読者はもう一度この作品を読まなければなりません。私は2回目は違った楽しみがありました。ですが、2回目の読後の感想に対して、作者はある種の踏み絵を仕掛けているのかもしれないと感じました。私には今、森高のあの曲が聞こえます。
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