「DZ」 小笠原慧 角川文庫 ― 2006/02/16 23:44
ベトナム系天才遺伝学研究者グエンは、日本人留学生石橋を新しい研究のパートナーに選ぶ。類人猿の卵子に遺伝子操作を加える研究は、しかし、恐るべき目的を持っていた。過去の陰惨な殺人から端を発した物語は、やがて石橋の恋人涼子を中心に回り始める。
医療系サスペンスです。遺伝学、発生学、生殖や障害、進化といった話題が盛られていて、難しく、重いテーマを多数はらんでいます。遺伝の法則くらいは頭に入ってないと、読んでてつまらないかもしれません。私自身は、難解な専門用語がでてくる薀蓄系の話が大好きなので楽しめました。
印象としてはとにかくよくまとまってます。一見いびつな形の石が、城の石垣のようにがっちりと相互に組み合わさって、隙のない立方体を作っている様子を連想します。文章自体はとくにリズミカルでも引き込まれる感じもしませんでした。描写も淡々としていて、それ自体が読ませる文章という気はしません。そういう意味で硬くてまじめで遊びの少ない文章だな、という印象です。
「知っていることを書け」という格言があるようですが、こういう専門知識のある人はやっぱり強いですね。もちろん、専門知識だけでこういう作品ができるなんて甘いものではないことは重々わかっていますが、現場の臨場感というかそういうものが伝わりやすいんじゃないかと思います。
コメント
トラックバック
このエントリのトラックバックURL: http://fey134.asablo.jp/blog/2006/02/17/256872/tb
※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。