「生物と無生物のあいだ」 福岡伸一 講談社現代新書2009/11/21 22:07

生物とは何か、生きているとはどういうことかを生物学的に説明している本です。とはいえ、小難しい理屈ばかりが連なっているわけではなく、生物学をめぐる研究の歴史や著者の過去などをゆらゆらとめぐりながらその問いの答えの周りをぐるっと巡って帰ってくるような内容でした。

出発点は、生物とは自己複製をおこなうシステムである、という現代の生物学における定義です。じゃ、ウィルスはどうなの?という問いからゆっくりと生命を探る旅が始まります。性急に答えを知りたがることを諌めるように話はあちらこちらへ飛びます。

ジグソーパズルの例や砂の城の例でわかりやすく生物を説明した後で、著者のノックアウトマウスを使った研究での想定外の結果について紹介します。掴みかかった生物の本質がするりと逃げて行く感覚があり、折り紙の例でそれを説明しています。

ここを読んでいる間、折り紙というよりは音楽じゃないか、と感じましたが、読後しばらくして鴨長明の方丈記の一節を思い出しました。
「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし」
これが実は生命のある側面を描写しているような気がしています。

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