「ベルカ、吠えないのか?」 古川日出男 文春文庫2008/07/20 18:48

極北で、北米で、ロシアで、ベトナムで、太平洋で、そして世界中で、殺し、喰い、喰われて、それでもなお殖え、20世紀後半を駆け抜けるイヌたちとおろかな人間の描く物語。

こう、帯には「無数のイヌ達の大叙事詩」とあったので、一昔前のイヌマンガみたいに必要以上に擬人化された話だったらどうしようとか思いましたが、それほどではないです。人の物語もそれなりに描かれていて、イヌだけの世界というわけではないです。

しかし、人の側の登場人物は実在の人物以外はほぼすべて名前が出てきません。「大司教」「少女」「怪犬仮面」などあだ名、一般名詞でしか登場しません。しかし、イヌたちにはことごとく名前がついています。つまり、イヌの話なのですね。これは。

硬軟自在な文体、過去と現在を織り交ぜながら進む展開はなかなかですね。やや突拍子もない、というところもありますが、叙事詩ですから。人のおろかなイデオロギーと相互の好悪の対立の中で翻弄されつつも生き続けるイヌの話です。

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