「パイロット・イン・コマンド」 内田幹樹 新潮文庫2007/02/20 23:17

ニッポンインター202便は霧雨のロンドンを成田に向けて飛び立った。名うてのクレーマーである要注意旅客、入国法違反で護送される特殊旅客を乗せ、客室乗務員たちと機長の不和を抱えて飛ぶ機内のトイレで備え付けのライフベストが捨てられているのが発見される。やがて日本近海へ差し掛かったころ、絶体絶命の危機が訪れる。これは事故か、陰謀か。

ジェットストリ~ムな導入がなんともいえないですね。ちょっと気障というかクセがある感じですが雰囲気もあります。ミステリとしてはちょっと、という感じでしょうか。陰謀ものとしてはうーん、ですが、サスペンス、クライシスものとしては結構楽しめました。

主役の江波の「欲求不満の優柔不断男」というキャラクタがなんとも言えませんね。私としてはこの上にセクハラ男、の称号を与えたいところです。翻って客室乗務員の皆さんは、個性はあるものの総じて美しく、賢く、健気な感じで描かれています。こういうのにおじさんのファンタジーはくすぐられる一方で、ホントはもっとお互いドロドロしてんじゃないの?と思わず下衆な勘繰りが入ってしまいます。

コックピット周りのシーンは(当時)現役機長が書いただけあって、臨場感がすごいと思いました。特にトラブル発生とその進行、それへの対処のあたりは手に汗握る展開でなかなかでした。飛行機マニアが見るとおや?というところがあるのかもしれませんが、単なる飛行機好きとしては非常に楽しめました。

ただ、好みの問題でしょうが、エピローグがどうもしっくり来ませんでした。最後、時間がなかったのか?とも思えるような締め方でした。こういう無機質な終わり方が好みの人もいるかと思いますが、私はもう少し人間絡めてウェットな感じがよいですねぇ。あと、ミステリ、陰謀物としても、広げた風呂敷のたたみ方がもうひとつだと思いました。

デビュー作ということもあるので、別の作品も見てみようと思います。あー、フライトシミュレータやりたくなってきた。操縦桿コントローラで。

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