「ローマ人の物語8~13」 塩野七生 新潮文庫2005/10/06 23:53

久々の読書感想文ですが、ようやく自分の中でのカエサル祭りが終わりました。8~10のルビコン以前で一度感想を書こうと思ったのですが、どうにも我慢できず、一気に11~13のルビコン以後も読みきってしまいました。カエサルの部分についてはエンタテインメントとしても非常に面白いところですね。

塩野自身が13巻(単行本Ⅴ巻)の参考文献の冒頭でこう書いています。

「もしも、第Ⅳと第Ⅴの二巻が他の既刊の巻に比べてより生き生きと叙述されているとすれば、それは叙述した私の功績ではない。生き生きとした情報を与えてくれた、キケロとカエサルのおかげなのである。彼ら二人が生きた紀元前一世紀のローマほどに豊富で正確な史料を遺してくれた時代は、世界史全体を見まわしても他に類を見ないのではないかとさえ思う。」

これは多分真実ですが、おそらく、それだけではないのだと思います。おそらく塩野自身が、カエサルを深く愛しているであろうことも影響しているのだと思いました。

司馬遼太郎もそうですが、主題に選んだ人物への愛をすごく感じます。それは、好きだ、とか嫌いだとかではなく、その人物のありようそのものに対する深い理解というかなんというか、そういうものを感じます。なので、叙述に極端な肩入れは感じません。欠点は欠点としてしつこいくらいに書いています。カエサルもさかんに「禿」と書かれています。そのくせ、文章の端々にカエサルに対する暖かい視線を感じるのだから不思議です。

ところで、9巻(単行本第Ⅳ巻)に、ガリア戦記に対する文芸評論家の小林秀雄の批評が引用されています。この一部を再引用します。

「…少し許り読み進むと、もう一切を忘れ、一気呵成に読み了へた。…(中略)…『ガリア戦記』といふ創作余談が、詩の様に僕を動かすのに不思議はない。サンダル(軍靴)の音が聞える。時間が飛び去る。」

この時間が、小林自身の読書の時間なのか、小林とガリア戦記の時代を隔てる二千年の時間のことを指すのかちょっとわかりませんでしたが、僕は後者だと思いました。ともあれ、かっこいいですよね。こんな感想文が書けるようになりたい、と心から思いました。

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