「ジェネラル・ルージュの凱旋」 海堂尊 宝島社文庫2009/03/29 18:11

東城大学付属病院の万年講師田口は同期の救急救命センター部長速水の不正を告発する文書を受け取る。告発文書はリスクマネジメント委員会からエシックスコミティへ委ねられる。しかしエシックスコミティの長沼田は、バチスタスキャンダル後リスクマネジメント委員長となった田口の追い落としと、赤字垂れ流しの速水追放の急先鋒だった。

「チーム・バチスタの栄光」から始まる白鳥、田口シリーズです。文庫化のペースがすごく速い。映画化にあわせたからなのでしょうか。映画は「バチスタ~」の時から竹内結子が田口を、阿部寛が白鳥を演じています。映画は見てないんでうーんという感じですが、「ジェネラル~」では沼田を高嶋弟がやるみたいですね。これをみて、むしろ田口は高嶋弟でいいんじゃないかという気がしました。

作品では作者が一連のシリーズで掲げるテーマである死因と解剖の問題と、救命救急を通した医療政策の問題を浮き彫りにしています。たしかに救命救急に限らず、医療に採算性を求めるというのは限りなく無理な話な気がします。もちろん、救急車をタクシー代わりにつかう馬鹿野郎や胃薬もらいに夜間外来を訪れる不届き者がいるという利用者側の問題も多分にありますが。

話としてはどことなく法廷ミステリ的な要素を感じました。非常に狭い大学病院村のこせこせした制度と権力闘争の狭間で、げんなりするような手続きと議論が展開されるわけですが、白鳥と速水がそうした虚構の城を木っ端みじんに打ち砕いてしまう様が痛快ですね。派手な切ったはったは最終盤までありませんが、こういう展開のほうが白鳥のようなキャラクターが生きるような気がします。私は「ナイチンゲールの沈黙」や「螺鈿迷宮」よりこの作品や「バチスタ~」の方が好きですね。

ところで、「ナイチンゲール~」とこの作品は時間軸が重なっています。読む順番としては「ナイチンゲール~」→「ジェネラル~」でよいと思うのですが、先にこっち読んじゃうと違和感感じたりしないかなぁ。ちょっと向こうの作品によっかかりすぎな気がしたのが玉にキズというところでしょうか。

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