「私が殺した少女」 原尞 ハヤカワ文庫 ― 2008/03/15 18:20
探偵の沢崎は仕事の依頼の電話を受けて向かった家で、その家の娘を誘拐した被疑者として連行される。その疑いが完全に晴れないまま、今度は真犯人から身代金の受け渡しを指示される。警察からの疑心暗鬼の視線を受けつつ、被害者の父親から受け渡しを依頼された沢崎は無事少女を取り戻すことが出来るのか。あるいは・・・
こってこてのハードボイルド小説ですね。このミスのベスト・オブ・ベスト国内編の第3位、第102回直木賞受賞作、というものごっつい勲章つきです。1989年の作品ですから、ざっと20年前、バブル初期、といったところでしょうか。
1人称、感情を抑えつつ、ときどき持って回った表現。ハードボイルドの王道でしょう。この持って回った表現を、クサいとか変とか感じさせないように書けるかどうかがこの手の小説のポイントなのかもしれません。そういう意味では、これまで読んできているものの中では気にならない方だったと思います。まぁ、時代背景が20年前なのでその分差し引いた読みかたをしていますが。
もう1つ、1人称で書きつつ主人公の考えを書かないまま、あるいはそこからの推理を書かないまま、不連続に次の行動を書くケースがままあります。行動の意味を知らせない、あるいは誤解させることで、読者が行動の真の目的を後から知り、「そうだったのか」という気持ちにさせる手ですが、これもあまり繰り返すとだんだん興ざめします。この点でも許容範囲だと思います。
ストーリー自体も無理や引っかかりはそれほど感じませんでした。これだけの評価を受けている作品なのでエンタテインメント的には問題なしでしょう。私もまずまず楽しむことが出来ました。
それでもなお、このミステリがすごいとまでは思わなかったなぁ。そこそこ食べられるんだけど、なんとなくもう一度来る気にならないレストラン、位の感じでしょうか。
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