「ヨリックの饗宴」 五條瑛 文春文庫 ― 2006/12/13 23:39
自らの家族を虐待した上、実の息子の足を砕き失踪した兄栄一宛に舞い込んだFAX。そして、兄を探せという謎の女の出現。甥の裕之、姪のゆかりへの負い目に言い訳をするように兄を探し始める和久田は、政治家達の陰謀に巻き込まれていく。
初の「や行」タイトルです。めでたい。内容は、残念な感じでした。私としては、熱氷に続いてやっちゃった感じです。
謀略、諜報小説の典型的な形式のひとつに、
- 主人公は謀略のタマネギをふとしたきっかけで手にする。
- 中に真実があると教えられがんばって皮をむく。
- むいていると目にしみて涙が出たり、タマネギが硬くて爪の間から出血したりで大変だがなんとかすべ皮をむき終える。
- しかし、中には真実はなく空っぽ。
- したり顔で仕掛け人が現れて、「中身に意味はない。そのむいてもむいても皮がある、というのが隠さねばならない真実だったのだ。」という。
- 仕掛け人は後ろ手に真実のジャガイモを持っている。
ともあれ、この手の小説が面白いかどうかは、この謀略のタマネギと真実のジャガイモの関係性や仕掛けが優れているか、皮をむいている過程のドラマの描き方がうまいか、にかかっていると思います。両方そろえば万々歳ですが、そんな小説はあまりお目にかかりません。
まず、この話はタマネギの構造の方は私にはちょっと納得できませんでした。それが最善の方法とは思えないです。他にもいろいろあるだろ、と。でドラマの方ですが、どう読んでもしっくりこない。理由が良く分からなかったんですが、どうも、主人公の兄、和久田栄一のキャラクターが私の中で消化できなかったのが理由のようです。
二面性のある人間、というのは時々いるんですが、こういうタイプの人はあまり聞いたことがないですし、その行動がどうにも不条理な感じがして私の中でキャラが立ち上がらないんですね。残念。
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