「ローマ人の物語 35~37」 塩野七生 新潮文庫 ― 2009/12/20 14:18
持続可能な社会、というフレーズが最近頻繁に聞かれます。資源問題や温暖化、金融工学による実体のない経済成長などの問題を指してこれはいかん、ということなんだと思います。右肩上がりで成長を続けているときはイケイケで大体問題はないのですが、停滞した時、市場がシュリンクしてきたときにどうするか、というのが問われているのかもしれません。この巻のディオクレティアヌス、コンスタンティヌスの時代はまさにそういう時代だったのかもしれません。
少なくない数の研究家がもはやローマではない、というのに強い共感を覚えます。とはいえ、誰かが何かを失敗したからという印象もなく、時代の状況から不可避だったような気もします。一方で、欧米では何かと評価の高いコンスタンティヌスですが、キリスト教的な史観から眺める限りは本当の問題は見えてこないでしょうね。
何が悲しいかといえば、36巻の中ほどに写真のあるコンスタンティヌスの凱旋門にあるレリーフです。この時代、イチからすべてを作ることができなかったこともあるのか、他の古い時代の作品とのパッチワークになっています。五賢帝時代のレリーフとコンスタンティヌスの時代のレリーフを比較すると、200年近くも後の時代に作られているにもかかわらずあまりにも稚拙な出来栄えに愕然とします。文明や文化を持続する困難さを実感しました。1600年後の我々は多少は進化しているのでしょうか。COP15の会議のニュースを眺めながらふとそう思いました。
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