「長い長い殺人」 宮部みゆき 光文社文庫 ― 2008/09/06 00:58
会社員がひき逃げで命を落とす。その現場へ急行する刑事。その刑事の財布から話は始まる。何人かが命を落とし、人生を見つめなおし、やがて犯人に至るまでのさまざまな登場人物の財布たちの物語。
宮部みゆき、なんというか、お話をつづるのがやっぱり巧妙ですね。財布の視点、ていうのでこれだけ話を作るのだからすごいですね。その制約を感じさせない物語の展開が、描写がさすがです。
一方で話の中身はさほどパンチが効いているわけではないですね。まぁ、物語を楽しむ作品ですね。で、この話もご多聞に漏れず少年とおじさんのコラボあります。この辺はもうお約束っぽい感じです。
人と密接にかかわる持ち物としての財布を使った物語なわけですが、90年頃までならそうですよね。今は肌身離さず持つのはむしろ携帯電話だったりするわけで、そこが抜けざるをえないのが時代、という奴でしょうか。そこを割り引いて読まないと少し違和感を感じました。
ところでこの話、「模倣犯」のプロットじゃないか、と思われる節が結構感じられます。もちろん、「模倣犯」の方が遥かに物語の要素がいっぱいありますが、実は芯はこの話じゃない?とか邪推してしまいます。
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