「熱氷」 五條 瑛 講談社文庫2005/09/02 23:16

カナダで銃を操り氷山採取をしている石澤は、実の姉同然に供に暮らした従姉である朱音の死を洋上で知る。帰国した石澤は姉の死に不審を抱きながらも、姉の遺児、光晴と供に暮らすことを決意するが、突然光晴は誘拐される。小出しに明らかになっていく犯人の要求。そして、首相暗殺をほのめかすテロリストの暗躍。石澤は最愛の姉の息子を守ることができるのか?

五條作品は、プラチナビーズ、スリーアゲーツ、スノーグッピーを読んでいます。プラチナビーズ、スリーアゲーツでは、どうにも頼りないハーフの諜報員が主人公でそういう設定が悪くないなぁ、と思っています。中の展開ではちょっとそれはないだろ、というのもあるんですが、つい、この本も書店で見つけて買ってしまいました。上記作品と比較すると、ちょっとハードボイルドよりな展開で、そっち方面が好きな方は楽しめると思います。

犯人にいいように踊らされる主人公、犯人周辺を探る石澤の友人、その友人を探る右翼の構成員、着々と計画を進める犯人グループという視点で話が展開します。手に汗握る、というほどではないですが、終盤まで展開にそれほど無理は感じられず、素直に話を楽しめると思います。

途中で出てくる闇物資を調達する双子と石澤が組むことが話の軸となっていくんですが、この双子の存在は、ちょっとどうかな?という最初の引っ掛かりの元でもありますが、話を成立させるための重要なポジションだと思います。

ともあれ、銃器を仕事で扱っている主人公がドンパチやるような単純な展開でないのは良いですね。まずまず面白かったと思います。

が、最後の最後がちょっと腑に落ちません。まず、主人公と犯人の対峙があるんですが、なんでそこにいることがわかったのか?不思議です。別にそんなこといいじゃん、という気もしますが、そこの説明がないと、どうして誘拐された光晴があれだけヒントを出したのに、監禁場所がなかなか見つからなかったのかという点とバランスが取れません。

次に、狙撃ポイントです。なぜ、そこに行けばターゲットがやってくるとわかったのか?また、ターゲットの動きが不自然なような気がします。当初の予定を手に入れていたとすると、そのターゲットの動きはありえないように思えますし、ターゲットの動きを見てから狙撃ポイントに入る時間はないように思ったのですが、どうでしょうか?ぜひ、地図を見ながら読んで欲しいと思います。

最後の数ピースの形が合わず、しかも数が足りないジグソーパズルのようでちょっと気持ちが悪かったところです。