「数学的にありえない」 アダム・ファウアー 矢口誠 訳 文春文庫2010/01/10 00:05

Aのフォーカード。あらゆる確率計算を瞬時にこなす能力を持つデイビッド・ケインは勝ちを確信したが、それ以外ありえないロイヤルストレートフラッシュで賭けに敗れる。カジノの主人であるロシア人ギャングに借金を背負ったケインに芽生えたもう一つの能力を巡って国家安全保障局が動き始める。

サスペンス、というよりはSFでしょうか。ラプラスの魔がテーマです。ラプラスの魔とは世界のあらゆる情報、法則を知ることにより、未来に起こりうることを全て完全に予測可能な超越的存在のことです。ずいぶん前に読んだ神林長平の短編にもラプラスの魔をテーマにした作品があったと記憶しています。SFでは割とポピュラーなテーマなんでしょうか。

話はかなりエキサイティングで、陰謀あり、大爆発あり、タフな傭兵あり、美人の女スパイありとハリウッド向けじゃないの?と思うような内容です。映画化するのかな、という気がしなくもないですが、2年程前にちょっと似たB級な感じの映画がニコラス・ケイジ主演でありましたね。そういえば。でも、あれに比べれば話の出来はずっといいと思います。

細かいことを気にしなければ楽しめる作品だと思いますが、私が引っかかったのは、未来に発生する事象を主人公のケインが確率で表現するところです。無限に枝分かれした未来という言い方を作中でしている以上、母数がわからんのにその事象の発生する確率は出ないだろという気がしました。