「ローマ人の物語29~31」 塩野七生 新潮文庫2007/10/14 22:59

この巻では五賢帝の終わりの時代から内乱とその顛末を描いています。皇帝で言えば、アントニヌス・ピウス、マルクス・アウレリウスと続いて、コモドゥスの暗殺と内乱の末セヴェルスが勝利し、息子のカラカラが帝位に登るまでの時代になります。

平和と経済の発展によって、さしたる困難もなく治世をまっとうできたピウスに対して、蛮族の侵入、飢饉、洪水というさまざまな困難の末、ゲルマン人との戦いの最前線で死ぬことになるマルクス・アウレリウスの治世は対照的であると感じました。高校の教科書では一口に五賢帝、と書かれて必死で5人暗記したものですが、それぞれにドラマがあるわけですよね。学校で教わる歴史って不幸だ。

この巻では、ゲルマン民族の移動、パルティアの衰亡と歴史の大きなうねりの中で、滅びの坂道を転がり始める予感が満ち満ちています。これまでも何度もローマ人は危機を迎え、克服してきているわけですが、以後はこれまでとは何が違い、どうして分裂、滅亡してしまったのか、目が離せないですね。続刊が楽しみです。