「99%の誘拐」 岡嶋二人 講談社文庫 ― 2006/05/29 23:07
私財をはたいて会社の起死回生を図る生駒洋一郎は、虎の子の5,000万円を一人息子の身代金として誘拐犯に奪われてしまう。会社は買収され、相応のポストを得たものの、7年後、ガンに侵された洋一郎は無念を息子慎吾に書き残しこの世を去る。明らかになった身代金の行方、父の手記をきっかけに前代未聞の犯罪プログラムが起動する。
ハイテクを利用した犯罪劇です。とくにややこしい謎が仕掛けられているわけではなく、次へ次へと展開が流れていくのが読みやすいですね。私なんかはシステムはいざというときにトラブルを起こす、という経験が多いので、ハラハラドキドキものでした。
20年近く前の小説なので、ハイテクといっても懐かしい感じは否めません。その代表が音響カプラですね。今の若者はなんのこっちゃわからないのではないでしょうか。パソコン通信なんて用語も既に絶滅しつつありますね。技術のレベルや製品に関して、頭の中であの頃に巻き戻しながら読んだのですが、なかなか懐かしさを誘って楽しかったです。
しかしながらトリックや展開としてはちょっと納得いかない点は多々あります。どうでもいいとこならいいんですが、特にこのシステムのキモの仕組みと、最後の展開についてはどうなんでしょうか。私はちょっと首をひねってしまいました。
今のように技術情報があふれているわけではない当時、これだけハイテク機器を(それなりに)無理なく活用した話を書いたことは凄いと思うのですが、設定や展開を振り返るとちょっと物足りない、という感想です。
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